がらくた通り

人によってはがらくた同然のものでも一個人の形成には不可欠だったりする。自我の源泉をたどる旅におつきあい頂けたら幸いです。

1968年製 テレキャスター 1回目

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1987年の何月号かは忘れましたが
秋に購入した「Guitar Magazine」誌。
本をめくりながら一つの広告に目が止まりました。
札幌地下鉄北24条駅すぐ隣のビルの2階に
札幌では珍しいビンテージ・ギター専門店がオープンするらしい。
友人と早速行ってみることに。

ビルとは名ばかりで古い2階建ての建物。
1階の隅に幅90cmくらいの階段がある。
外は秋晴れで日差しがまぶしいのに、
そこだけ真っ暗でジメッとしている。
恐る恐る薄暗い階段を登ってみる。
登りきったところにいきなり現れるお店の扉。
ドアの幅も90cmほど。

とても入りにくい雰囲気がドアの外まで漂っている。
せっかく来たのだからと、意を決してドアを開けてみる。
お店というよりはアパートのワンルームといった佇まい。
古いギターが無雑作に所狭しと並んでいる。
客は僕らだけ。

その真ん中で三脚イスに座って、
無言でギターに弦を張っている男がいる。
僕らに気がつかないのか、
無視しているのかわからないが、
小肥りなその中年の男は、
自分の今やるべきことを脇目も触れずに、
こなしている。

とても声をかけられる雰囲気ではないが、
無視されっぱなしも不本意なので声をかける。

「『Guitar Magazine』の広告を見てきました」

その男はまるでガンダムを操縦したばかりのアムロが、
始めてザクに攻撃をしかけた、
あの憎悪のかたまりのような視線を僕らにむける。
あきらかに敵意むき出し。

とてもギターの見学に来ましたとは言えず、
ギターがほしいと言ってしまった。

〈つづく〉

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