がらくた通り

人によってはがらくた同然のものでも一個人の形成には不可欠だったりする。自我の源泉をたどる旅におつきあい頂けたら幸いです。

1968年製 テレキャスター 2回目

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男は依然手を休めない。
ペグをあまりにも巻いているので、
弦が切れてしまうのではないかと
痛そうな表情を浮かべると、始めて口を開いた。

「どうした?」
「イヤ、弦が切れて指に刺さるのではと思って」と応える。

始めて表情が少し和らいだ感じだが、
それはあくまでも僕ら素人を小バカにしたような笑い顔。
が、案の定弦が切れて一言。
「指に刺さった、イテッ」

少しバツ悪そうな顔をしていたが、
これがきっかけとなり、少しうちとける。
名刺を受け取る。
男はこの店のオーナーでH氏というらしい。

雰囲気に押されてギターがほしいと、
つい言ってしまったが、
実はそれだけではない。
こんなにたくさんの年代物のギターを
目の当たりにしたのは始めて。
かなり圧倒されていたのも事実。

今も忘れられない
ドアを開けてすぐ、
左側から黒いギターが目に飛び込んできた。
それが60年代のダン・エレクトロ。金額は8万円。
このギターを実物で見たのは始めてだったので、
かなり興奮してしまった。
さすがに50年代のギターは、
ストラトテレキャスが2〜3本しかないが
60年代のものが凄かった。
今では考えられない、まさに宝の山。

〈つづく〉

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